価値創造コラム:「コミュニティからのイノベーション」
キャズム理論を理解して、
事業をスムーズに立ち上げる [6]
(3)違和感なく使える状態にして、アーリー・マジョリティに売る
ある程度実績が出来てきたら、そろそろ広い市場に打って出たくなりますね。
でも、そこで大切なのは、広い市場の中の特定のニッチだけに焦点を絞ることです。
ムーアのキャズム理論のメインはここです。
ムーアは、ここでは4つの戦術が必要であることを説いています。書籍「キャズム」ではこの4つの戦術について、多くの事例と共に多くのページを使って解説されています。
- 攻略地点の決定(ターゲットカスタマーの見極め)
- 侵攻部隊の集結(他社も巻き込んで、全力でニーズを満たす)
- 戦線の見定め(知名度のある他社商品との比較で、優位性をアピールする)
- 作戦の実行(販売チャネルを確保し、売る気になる価格設定をする)
ここでは、「侵攻部隊の集結」について書きますが、アーリー・マジョリティにとって大切なのは、
導入がスムーズなこと
です。
「導入がスムーズ」というのは、今あるものを急激に変えなくて済むということです。
ひとつは、その商品を導入することで業務のやり方を変えなくても済むこと。特に現場の人数が多ければ多いほど、今のやり方を変えることへの抵抗は高まります。
「うっそ〜、お客さんとの打ち合わせの度に、これ入力すんの?やだなぁ」という反対勢力は社内に多くいますからね。
それから、技術的にもスムーズでなければなりません。
新しいソフトを使うとか、新しい機器を使わないといけないということだと、ハードルは高まります。
なので、「今お使いの Excelと連動してます」という風に、商品の使い勝手も改善しなくてはいけません。
技術的な観点で、他のシステムとも連動する必要がありますし、その連動のおかげで、すべての業務をカバーできることが必要です。 「この業務は新システムで劇的に良くなるけど、それ以外の作業は今までのシステムで、」ということでは嫌がる人がたくさん出てくるわけです。
ここまで来ると、自社だけではカバーできませんので、他社の商品と組み合わせてトータルで業務がカバーできるようにしておきます。 もしくは、M&Aで関連ソフトの会社を買収する企業も多くあります。
これが、「侵攻部隊の集結」です。
私も、いろんな会社に提携話をしに行きました。ソフトウェア会社だけでなく、データ提供会社などにも新サービスに関する相談をしに行きました。
今振り返ると、アーリー・マジョリティ対策をやっていたわけですね。
(4)面倒なことを排除して、レイト・マジョリティにも使えるようにする
市場に受け入れられて、さらに大きなレイト・マジョリティも取り込みたいとなると、もっともっと使い勝手を良くしなければなりません。
携帯電話だって、ご年配向けにはボタンを大きくしたり、ワンプッシュで掛かるようにしたり、工夫をしています。
また、使わない機能は逆に間違って使わないように、簡易版を提供したりします。
最後の、買わないラガードは省略しますが、大体このような流れで、商品展開をしていきます。
■最後に
マーケティングの基本の一つは、「誰に売るのか」をイメージすること。その『誰』というのも、フェーズによって変わって来るわけですね。
最初に誰に売って、次に誰に売るという「売る順番の戦略を持つこと」や、もし、すでに商品が売れているなら、買ってくれている顧客が、どのフェーズの顧客なのかを明らかにすることが大切ですね。
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