価値創造コラム:「コミュニティからのイノベーション」
キャズム理論を理解して、
事業をスムーズに立ち上げる [5]
フェーズによるこの顧客対応の変化の仕方を、もう少し詳しく解説します。
(1)まず、イノベーターに使ってもらって意見を聞く
イノベーターの人たちにとって、その商品をどう使うかは問題ではありません。
技術的に見て、今までの商品とどう違うか、というところに関心があります。
ですので、この人たちには、なるべく詳しい技術情報と共に商品を提供します。それも、評価版ということで無料提供するとか、格安で提供します。
その上で、使い勝手や改善案を聞いて、商品に反映していきます。その反映結果も随時報告します。イノベーターの人たちにとっては、自分の意見が商品に反映されることが自分達の存在意義を証明することになり、それが行動の大きなモチベーションとなるからです。
大体、こういう人たちは企業の技術部門にいて、他の社員が困ったときにだけ登場するような技術屋さんです。会社からも、ある程度の予算があって、新しいものを評価のために買うことが許されています。普通に忙しく仕事している人ではなく、オタクっぽくて、何の仕事をしているのか分からないような人です。
小さな商品なら、サンプルを持っていったらいいですよね。
大規模な商品の場合は、試しに使ってもらうことができないので、パンフレットを持って意見を聞きに行きます。色々と意見を言ってくれるのでありがたい存在です。
新商品は、既存顧客に買ってもらうのが鉄則なので、すでに知り合いのイノベーターがいたら真っ先にサンプルを持って行きましょう。
私の場合は、大企業にいたので、営業の人たちに社内営業するのが本当の第一歩でした。社内にもイノベーターの営業課長さんなんかがいて、「お客さんに話をつけて、今の開発現場で、生データを使ってテストさせてあげる」とか、ありがたいオファーを頂いたりしました。
昨今は、個人情報保護法などの影響もあって、個人情報が含まれた状態ではテストが随分やりにくくなりました。
でも、アプローチはそんな感じです。
(2)アーリー・アダプターと一緒に夢を実現する
ある程度、使用感とか商品のテストをやって、改良しつつ、導入してくれそうなアーリー・アダプターを探します。
ポイントは、夢を語ることです。
私の場合は(たまたまですが)、「この製品によって、こんなばら色の未来が待っている」「業界に革新をもたらす」「不可能を可能にする」というメッセージで、パンフレットや提案書を作りました。
「どうしてもこんな会社を実現したい!」という人には、ビビッと響きます。
たとえば、「業界初の 24時間、365日フルサポートの体制をやりたい!」とか、「納品までを2日で終わらせたら、業界最速だ!」という夢ですね。
こういう人たちは、夢が叶うのであれば、実績のない商品でも買ってくれます。
逆に、「稟議を通すために、あの件も実績として提案書に書いといて」ということも(笑)
ありがたいことです。
あとは、法律が変わって、どうしても対応が必要という場合でも、実績のない商品を買ってもらえます。
既存商品で対応できない夢なので、実績がなくても「これしかない」と選んでくれるわけです。
もちろん、アーリーアダプターは少数ですので、「広い市場でたくさん売りたいんだけど・・・」 と、お思いかも知れませんが、最初から広い市場に行くと、買ってもらうことさえできません。まずは、着実に買ってもらえる相手(アーリー・アダプター)を探しましょう。
前ページ< 1 2 3 4 5 6 > 次ページ
■ビジネスコンセプト構想力〜価値を生み出すアタマの使い方
■コミュニティ型マネジメント〜チームをまとめるには?
■自立型マインドセット〜経営者マインド・起業家精神とは?
|